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カンチレバー架設は、一般に柱頭部上に組立てた移動作業車を使用し、柱頭部から左右対称に張り出し架設を行います。張出し施工には、対称施工・非対称施工があります。張出し架設の1施工区分の標準サイクルを図14に示します。
図14 カンチレバー架設の標準サイクル
カンチレバー架設で使用する移動作業車は、カンチレバー架設先端の1施工区分の橋体製作に必要な作業空間(足場設備や屋根設備含む)を確保すると共に、先端施工区分がその自重および移動作業車重量を支持できるまで施工区分の荷重を支持します。
1施工区分のコンクリートに所定の強度が発現し、PC鋼材を緊張しプレストレストを導入した後に、移動作業車は次の施工区分の位置まで移動・セットし、同様のサイクル作業を繰り返し、順次張出し架設を行っていきます。
移動作業車の主な構造は、メインフレーム(主構)、横梁(前方・後方)、下段作業台、移動用レールにより構成されます。下段作業台には、サイクル作業に必要な足場設備が設置されます。メインフレームは、前方と後方の横梁を介し、1施工区分の橋体重量と型枠、下段作業台などの仮設備荷重を支持します。これらの荷重は、橋体のウェブ近傍上に設置したメインフレームを介し、前方のメインジャッキと後方のアンカー鋼棒により既設の橋体に反力として伝達されます。また、移動用レールは移動作業車移動時の移動作業車自重、型枠および足場重量を支えます。
移動作業車は、機種によって構造に若干の違いがありますが、主要構造は同じです。図15に一般的な移動作業車の構造を示します。
なお、詳細な構造については、当研究会「技術資料」を参照してください。
図15 一般的な移動作業車の構造図
移動作業車の組立方法は、その組立地点の地形により異なり、これにより組立に必要な仮設備や施工日数も異なってきます。以下に組立地点の地形条件による具体的な移動作業車の組立方法を示します。
- 移動作業車組立地点の地形がほぼ平坦な場合
このような場合には、柱頭部上にメインフレーム(主構)および横梁を組立ながら、平行して地上に下段作業台を地組します。それぞれの組立が完了した後、メインフレーム上の横梁にセットした吊揚装置により下段作業台を吊り揚げます。図16 平坦な場合図17 移動作業車組立フロー - 移動作業車組立地点の地形が斜面で下段作業台の地組が困難な場合
メインフレーム(主構)および横梁の組立完了後、横梁にセットした吊揚装置から吊材をおろし、これに下段作業台を架設し吊り揚げる方法があります。この場合は、メインフレームの組立と下段作業台の組立が同時施工できないため、組立工数は(1)より増加します。図18 斜面の場合図19 移動作業車組立フロー - その他
上記以外の方法としては、斜面上に組立架台を設置し、この上に下段作業台を組立、(1)と同様に吊揚装置により吊り揚げる方法があります。この場合には組立架台の組立・解体が必要になります。また、この組立架台の替わりに柱頭部の施工で設置したブラケット支保工のステージを活用する場合があります。この場合には、ブラケット支保工の存置日数が長くなります。図20 組立架台を用いる場合図21 ブラケット支保工を用いる場合
上記の吊揚装置としては、高揚程電動チェーンブロックや油圧式リフティングジャッキなどがあります。
移動作業車以外にカンチレバー架設で必要な機材としては、移動作業車に付属する鋼製型枠および足場設備、揚重機械、コンクリート圧送機材、コンクリート打設機材、PC鋼材挿入機材、PC緊張機材、PCグラウト機材、地覆高欄作業車、工事用エレベータ等昇降設備、仮設電気設備(発電機、受電設備等)、仮設照明設備などがあります。詳細は「国土交通省土木工事積算基準16章⑦PC橋片持架設工表13.1機種の選定」を参照してください。
この中で揚重機械は、移動作業車の組立のほか、カンチレバー架設で必要な型枠、鉄筋、PC鋼材等の資機材を地上から橋面に揚重します。この揚重機械の計画に当たっては、最大吊荷重と作業半径により揚重機械の容量を決めるとともに、橋脚の高さや揚重機械のヤード周辺の地形により機械選定を行う必要があります。具体的には、トラッククレーン、ラフテレーンクレーン、クローラクレーン、クローラクレーン(ラッフィングタワー仕様)、タワークレーン、ジブクレーンなどがあり、施工条件により機種選定を行います。
なお、橋脚高さや橋体の桁高などは、揚重機械や昇降設備の計画のみならず、施工工数(工程)にも影響するので、施工計画段階では考慮する必要があります。